
前略 10月20日過ぎ、京都大学医学部付属病因歯科口腔外科に入院予定です。
ほんと驚きでした。この2~3年奥歯に痛みと違和感があって、近くの歯医者で非歯壊検査すると、なんと歯の根っこがポッキリ折れていたんです。
先生の話だと折れたのはずいぶん昔とのこと。なんで折れるかって言うと、噛む力が強い人に多く、歯軋ギリギリでも折れるって言う事なんです。
僕の折れた原因はタネを明かしますと、原因はどうやら梅干のタネが原因のようなんです。
例え折れても若い内はですよ、歯茎の筋肉が頑張るから折れている意識が無いんだって。ちょっと待てよ、それを意識できたって言う事は歯茎の力がガクッ気持も折れるなぁ…。
詳細はまたの機会にと言うことですが、手術は簡単なんだけど骨粗相症予防で1年間飲んできた薬(フォサマック)が原因で、入院が必要なんだって。入院は嫌いでも好きでもないけど。
1ヶ月ほどの入院が必要との事で、退屈な入院になります。根っこが折れた歯の手術は10分ほどで終わるようですが、その前後1、2週間毎日高圧酸素室に隔離。トンネルに入ると耳の中キューンってなるでしょう、あんな感じだって。その防止策は、鼓膜に極小さな穴を空けるんだって。まさかロボコップになっていたりはしないと思いますが、まぁゆっくりパソコンと向き合うつもりです。
ただネット使えないのでメールがね「I’LL SOON BE BACK」
それまで9090も4649。 SEP.19 Thu. 宇ーじい
やがて入学予定の松飲屋~これだよまったく何でこうなるのよ。
これで思い出した事がある。本当なのか作り話なのかは分かりません。
大学受験で上京していた大学生が、受験日真近になり財布を無くしてしてしまった。
さぁ大変これでは受験に行く事も出来ないし、何も出来ないから実家に最短の電報を打った。
「カネクレタノム イソグ」その親からの返信「ヨカッタナ イソイデ サケ ノムナ」
この親、「金をもらったから酒を飲む」って思ったらしい。お陰でお受験パァ。
やがて入学する松ノ宮小学校1年2組カメ乃先生のピアノ弾き語りが始まる。
レパートリーは沢山あった。
先生のフェイバリットソング~♪春 花の実のふゆのさむさや~なんたら、かんたら。
僕にはよく解らない難解な歌だった。恥ずかしながら長い間大きな思い違いをしていた。
♪春は(ココを空ければ良かったものを)名のみの冬の寒さや~♪北風吹き、温い寒い朝?心一つでなる暖かくなるって?聴覚障害なのかな僕!それとも学習障害なのでしょうか、おそらく一生涯この路線かも知れません。
1951年(昭和26年)春まだ浅く淡き夢心地…トントントン?ちゃうなぁコンコンコンコンうん、こっちや。ネギを刻む包丁の軽快なお囃子で目が覚める。
あ!お父ちゃんおる?珍しいなぁ何でや、首になったんかぁ。
眩しい朝陽が差し込む窓際の釜から立ち上がる湯気と、土間の七輪の鍋から上がる湯気に隠れた母がいる。さては児雷也、蜻蛉かおのれ霧がくれ。
起きるなり「ハクサイちょーだいって言いや 転びなや」とお母ちゃんに頼まれ、僕は始めてのお使いにげた履きで駆ける~それぇー!一回こけてもた。
開けっ放しの玄関出ると「どこいくんや!」と松下のオジサンが、また僕に同じ事言ってるが聞こえない~振りをする。
高木のオバちゃん、お地蔵さんの前で独り言。大関さんの仕事場の電気が既に点いている。その角の大関のオバチャンのたこ焼き店の雨戸がガタンと動く。あ!駄菓子屋のおばちゃん表のお掃除。その角を右に行くと4軒目が酒屋、表戸が大きく開いている。
実は毎年春先になるとツバメが店の中に巣作りする、だから表戸は夜でも少しだけ開けっ放し。我が家の開けっ放しは、母と僕がひっきりなしに出たり入ったりするから。
また近所中、玄関の戸を閉めている家庭は冬でも殆ど無く、閉めるのは夜寝る時だけ。
高い高い天井の土間の正面に、大きな漬物樽や味噌樽がいくつも(六つ)並んでいる。母も漬物を漬けてはいたが、二、三日に一度は木桶(※1)を抱えここまで走る。
買物は白菜・水菜・高菜などの葉物ばかり、今思うと当時母が漬けていない物だった母の漬物は茄子・キュウリ・ダイコン・ニンジン・ウリ、・スイカの皮などのヌカ漬けがメイン。
オカズは炙った海苔が良い 流行の物など無くていい~シジミ汁飲めばシジミジとーうおぉー!何が言いたいんか自分でもわかりません。
味噌汁と納豆、それに大きく切った白菜や高菜の漬物で、炊き立てのご飯を大きく包んで食べるのが我がファミリーブーム zoom zoom zoo~m in アサー!
酒屋の向こう角は甘味屋、その向かい角が大きなラムネ工場。道路を渡れば右に馬の整備場がある。だが、まだ未だ未知の世界。
※1:洗面器ほどの木桶で漬物はもちろん豆腐もこれ、最も活躍するのは夏場、1貫目の氷を入れカチワリを作る。ラムネやビールも冷やす万事OKさ。ザリガニは?こっぴどく怒られ、即独房行き。
母の心のこもった温かーい朝ご飯で身も心も温まった。また「どこいくんや、暇やったら手伝え儲かるで!」と楊枝を咥えながら言う。一体何がもうかるんかなかいな?
何時も大きな犬の側の長椅子に腰掛て、キセル煙草をプカリと吹かしている暇そーな松下の怖ーいオジサンが僕の顔を見る度仕事を手伝えという、お母ちゃんどないしよ?
松下のオジサンに「自分でやれば」と言うボキャはボクには未だなかった。よほど僕が暇に見えたのか、いや暇だったから仕方なく手伝いを始める事になってしまった。
手順は何も聞かなくても全てよーくわかっている、殿も強い?ルーキーが誕生した。
そや、契約金はお母ちゃんが…?。
午前と午後2、3時間ほどのお手伝いで20円(時給7、8円は現在の百分の一!)。
お小遣の10円にたすとえと+×?10を10にたす10と…まだわからん、でもホンマに儲かるので張り切った。
やがてもっと頑張らなくてはならない事情も出来、このお手伝いは長く続けた。
兄の話だと昭和25、6年頃だと、大卒の初任給は3,000円。コレを時給に換算すると120円。だから大卒の時給は15円(金額は全てアバウト)。すると僕の一日のお小遣の10円は月300円って結構高額なんだ、遅れましたがお母ちゃんありがとう。
焼いたキュウリ一本5、60円は今に換算するとなんと!とても高くて買えないよ。だって僕はまだ何も卒業していないから。焼いたキュウリって?それは秘密です。でもまた焼キュウリに手が届かない、そんな時代がやってくるかも知れない。
翌年春、僕のアルバイトの作業半径が大きくなり10円の昇給。これで中卒ほどか、どや!オジサン好きになってきた。
それは路地の一番奥の絵付けの仕事場まで、下ごしらえの終わった板を運ぶこと。下塗りの仕事人のように一度に何枚もの板を運ぶのは僕には無理だった。だから両手に1枚ずつ持って、小走りで運んだ。
運んで驚いたのは、なんと職人さんと並んで兄が居る~退学なったんか!
衝立の腰痛 ちゃう腰板(なんと言う部品なのか?)の絵を書いている。何時の間に僕に内緒で、なんでや?また先手を越されてもた。
当時平野の摂陽中学に通う事になった兄は、父譲りで絵が上手かったようだ。
僕はアルバイトを始めるまでは知らなかったが、どうやら兄は自分の画才をオジサンに売り込んだようである。そして松下工場が忙しくなる冬休みから、このアルバイトを始めていたようだ。
兄はこのバイトを、旭南通りを離れるまで毎日続けた。その兄がバイトで稼いだお金は、殆ど僕と二人の洋画観賞や、兄のお気に入りの画材の購入に消えたような気がする。
兄達の作業場の中はシンナーの刺激臭が目や鼻にツンと来る、だからあまり好きではなかった。でも絵付師や兄が絵を描くのを見たくて、我慢して見学にいった。
2人のベテラン職人さんに混じり、兄もタオルでマスクをして描いているのは松・竹・梅や鶴。それを一筆でサッサッっと書き上げる、そんな兄がとても格好良く思えた。
兄は頭もよく、摂陽中学校ではいつも学年で一位か二位を争うほど成績が良かったと母が言う。確かに兄は「勉強は学校でするもの、学校終われば好きなことをやっていれば良い」なんて言っていたことを思いだす。だから毎日アルバイトが出来たのだろう。
それで何かにつけて僕と兄がよく比較対象になった。おまけに姉も秀才と来ている。
それが僕にはとても迷惑なんだ、そんな辛い過去から〝目を覚ませ早く!〟ってみゆきちゃんに言われても…。
摂陽中学校では製図の授業があり、その授業担当の鶴見先生(※2)から〝市立工芸高校〟へ進学し、将来は図案家(デザイナー)になるように薦められていたようだ。
当然兄もグラフィック・デザイナーになる事を、早くから決めていたらしい。
※2:鶴見先生なんですが、実は後年僕もこの先生の授業を智ハウ学校で受けることになるんですが、その時彼は…僕に一言なんと言ったでしょうか。「みえみえばれてまっせ。」
夕方もう一度酒屋さんに歩く、なぜ歩く。それは重い一升瓶を抱きかかえているからだ。何も言わなくても酒屋の伯父さんが、大きな樽の栓をギュギュギュウ~ギュイッと抜く。酒樽の栓を抜き大きな枡で素早く受け、それを一升瓶にジョウゴで移し入れてくれる。僕はこの時の甘い香りが大好きだった。で、ココではお金を払った事は一度も無いのは?何故。
味は分からないが、ただ父の大切な飲み物だと言う意識か、一升瓶を抱きかかえ転ばないようにゆっくり慎重に歩いた。大関のオバチャンも「今日はコレでお終い店じまいや」って。見ると鉄板の中に炭のように真っ黒になったたこ焼きが2、3個残っていた。
お父ちゃん今日は休みやったんや、ツマミは炙ったイカではなくメザシ。ほんま旨そうに呑む。お使いの一升瓶の中身は何時も半分、その理由を見つけたのは随分後。
西田サチコが大好きだったお父ちゃんの一升瓶の中味は生涯♪やぁっぱり酒は菊正宗。大阪はもうすぐ春です、花屋ではアネモネが我先にあふれてる~春だ春なんだな。


